そろそろ新蕎麦が出て来る季節だ。蕎麦は信州の名物、蓼科には観光名物を目指す蕎麦屋が五万とある。でも名物に美味いものなし。誤解された「洗練化」が充満している。観光用京料理や東京のデート用飲食店と同じだ。有り難がって通う客にも責任が問われる。父さんと母さんが、蓼科でこれぞと思える蕎麦を提供してくれるところは2軒程しかない。でもそういう所でさえも、つゆには満足出来ない。我が家では打ち立ての麺だけを買って来て、いい水で茹でて冷やして、カツブシと醤油とバルサミコで食べる。父さんはそれに「大根おろしの汁」を加えるのが大好物だ。新蕎麦、今年はまだ、口にしていない。
612ファームの蕎麦は、収穫とポストハーベストでジャガイモ以上の徒労をし、結局あきらめた作物の一つだ。蕎麦は雑穀の一つで、刈取りと乾燥等に通いペースでは出来ない間合いが必要とされる。そして、脱穀から籾(もみ)とり、さらに粉引き、、ポストハーベストも素人には決して楽ではない。しかも、専門業者に頼む程の量も無い。かつて手回しの脱穀機を借り、何とか食べられる粒を手にし、石臼を借りて手で曵いたが、日が暮れるどころの騒ぎではなかった。612ファームでは、もうとっくに栽培をやめたが、畑ではこぼれ落ちた実から、自生化した蕎麦の白い花が今でもちらほら咲く。
蕎麦を麺として食べるのは日本と韓国(韓国の場合、100%蕎麦の麺はない)だ。蕎麦は西洋でも荒れた土地に強く、小麦の様に年貢として取り上げられない穀物として作られ食されてきた。新大陸から西欧にジャガイモが伝わり、蕎麦はそのポジションを譲ることになるが、ケネディ家のアメリカ移住の原因にもなった、アイルランドの「ジャガイモ飢饉」の体験が西洋人の記憶に強く残っているのか、最後の非常食として蕎麦は今でも広い地域で作られている。基本的な食べ方は、蕎麦粥。そして、その茹でこぼした汁がストーブの上で膜となりクレープが生まれた。曵きたての蕎麦粉で作ったクレープにいろいろなチーズと木の実を合わせると、ワインのベストおつまみとなる。
みかんには粒か粉の状態でご飯の素材の一つとして与えることが多い。きちんと作られた蕎麦の実や粉を入れるとご飯の風味に奥行きが増す。
■612ファームの野菜とみかん ■ここ掘れトリフ? 今年はジゴボウの当たり年だ。
●ファームのとれとれ野菜雑炊(タイの宮廷料理の味がした)
612の茄子・カブ&葉・大根&葉・ミニトマト、乾燥椎茸、乾燥まいたけ、切干し大根、高野豆腐、赤レンズ豆、ひじき、隠元豆、ジャガイモ、薩摩芋、人参、牛蒡、田作り、きな粉、エゴマパウダー、デーツ、雑穀6種、五分つき米、すり黒胡麻。