父さんは「漆のお椀を使いましょう」と云う活動(呼びかけ)を612を通じ一人でやっている。
父さんはその昔、仕事で漆器の産地や職人さんとの付き合いが深くなり、漆工については今もそれなりにちょっとうるさい。
漆は縄文時代以前からに鏃(やじり)等の接着剤として用いられ、その後木工品を保護する塗料として発達して来た。日本では、下地の開発とともに工芸材料にまで発展する。世界でも照葉樹林エリア周辺でしか採取出来ず、技術的にもその中で発展した。しかし、漆の成分は地域によってかなり異なる。南方のものほどゴム質が多く、テカテカと光沢は出るが、硬度は低く劣化も早い。その点日本の漆・漆工芸は最高だ。日本の漆は、その技法とともに、世界の塗料開発者から常に目指すべき頂点とされてきた。
ところで、食器として漆器を使うのは、ブータンやビルマやタイの一部と日本だけだ。日常的に一般の家庭で使われているのは日本だけだ。韓国にも中国にも「漆のお椀」はない。
だから、日本人が「漆のお椀」を使わなくなったら、漆のお椀を作る技術は途絶える。それでなくても「ベークの木地に漆のようなものを吹き付けたものが漆器として出回っている今日、消費者がよほど自覚して「漆のお椀」を使う暮らしを楽しまないと、先は危ない。「漆のお椀」をユネスコの世界遺産に指定して欲しい父さんだ。
昨今、「スローフード」なるものが日本でも呼びかけられているが、日本でそれを云うならば、先ず「漆のお椀を使いましょう」と云う項目が筆頭に記されるべきだと父さんは思っている。百貨店でもシンプルな漆のお椀は「お荷物」の一つだった。店員がお客に質と値段の意味を説明出来ないのだ。「漆のお椀」の実直さは商業主義には乗り難い。
漆器の良さは手に持った時に絶頂に達する。だから、残念だけどみかんにはその良さがあまり通じていない、、、と思うのは人間の驕りか? みかんには触感の鋭い舌がある。しばし要観察。
■父さんか塗ったお椀。蒔き地に摺り漆。縁には寒冷紗を巻いてある。■父さんが付けた高台。かなりユニークでしょ。非売品。
●昨日と同じ
※間食に人参。前菜に生米糠、気仙沼の戻り鰹のアラ。デザートに黒米入り茹で小豆。